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僕は行かない

昨年、おおかたのスタッフの反対を押し切って地域生活に向けてのトレーニングを始めたSさん。

彼は障がい程度区分が6で、言葉を発せずコミュニケーション手段はこれまでに培ってきた自分なりの手話とボディーランゲージなのである。融通が利かず自分の生活リズムやペースを乱されると興奮してしまう。

既に30年以上入所施設で生活してきた彼が、唯一喜んで関わりを求めるのは女性なのだが、その彼がどうしても受け入れられない女性スタッフが居るらしい。先日トレーニングホームの宿直をした翌日、朝食後にSさんの姿が見あたらなくなった。私の宿直の日は首にしがみついて顔面キスの嵐をくれるSさんが初めて所在不明になったのである。これまで長く付き合ってきたなかでSさんが居なくなると云う経験をしたことがない私はかなり緊張していたのだが、よくよくご本人の居室を確認に行くと、なんとクローゼットの中からイタズラ小僧のような笑顔で覗いていた。

“何をしていたの、びっくりしたなぁ”と声をかけると、Sさんは急に“仕事、、女、、怒る、、ケンカ”と彼の言葉(ジェスチャー)で伝えてきたのだ。その時の彼の表情はとても険しく、本当に嫌な思いをしているのが良くわかった。“まぁ そう怒らずに作業に行こうよ”と、一緒に施設に向かい“ここからは1人で行ってね、しっかりガンバってよ”と声をかけて作業棟の前で分かれたのだが........

数十分後に、就労支援担当の職員が“Sさんがここ数日、ずっと仕事に来ていないが”と呑気なことを言い出した。(※数日も出勤していないなら、その時点で伝えろよ!)
確認してみると、彼はここ数日トレーニングホームを出たあと、ずっと施設の通所利用者の控え室で横になっていたらしい。しかも“おなかが痛い、、下痢をしている、、仕事休む”と施設のスタッフには云っていたという。

結局、施設のスタッフが本当のところを確認して欲しいというので、彼によくよく聴いてみると
“仕事、、女、、嫌い、、怒る”と云い終えた次の瞬間、走ってTHに帰ってしまったのである。途中の交差点も全く気にする様子もなく一目散に走り去っていった。

後を追ってトレーニングホームまで行くと、既に彼は自分の部屋で大好きなビデオを見ていた。“何があったの”とジェスチャーで伝えると“行かない、、怒る、、行かない、、仕事行かない”と繰り返すだけであった。

しかしいつもと違ったのはこの時点で興奮することはなく(※これまでであればかなり興奮して奇声を上げたり八つ当たりもあるのだが)ニコニコと、あのイタズラ小僧のような笑顔で
“僕は行かない”“僕は行かないよ”と自分の意思をはっきりと伝えてくれたのであった。

結局、彼に些細なことで小言を云った就労支援のスタッフが気に入らなかったためのようだが、単純に興奮したり奇声を上げて自分の感情を表していた彼が、はっきりと思いを伝えてくれるようになったことがとても嬉しかった。

それから2日後、“僕は行かない”と整然と言い続けていた彼だが、問題のスタッフともなんとか和解できたらしく、今日は曇り空を吹き飛ばすかのような大きな声とひまわりのような笑顔で作業に就いていた。
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テーマ : 現場職員のぼやき・悩み
ジャンル : 福祉・ボランティア

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どんぐり隊長

Author:どんぐり隊長
知的障がいの方の入所施設に勤めてはや20数年。入所型施設の意義は?あるべき姿は?施設に求められているものはなにか?職員(支援者)の存在価値や倫理は?を常に自問自答しつつ、日々の仕事で感じたことを平易に書き連ねてみたいと思っています。

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